あらすじ

2029年、震災後の日本。
人々はコンタクトレンズ型の拡張現実デバイス「カクリヨ」の作り出すもうひとつの現実と、すべてを予想する謎の量子コンピューター IZANAMI とともに生きていた。
ディザ☆スターと呼ばれる猟奇犯罪者たちがひしめく東北の復興特区「時巡市」は、震災後に無国籍企業 AIR によって買い取られ、「忘却されるアーカイブではなく、忘却させないアーカイブを」というスローガンのもとに、カクリヨによる体験型アーカイブを実現させ、今や世界的な観光地として名高い。同時に時巡市は、新たなるテクノロジーの実験場となっていた。カクリヨ、自動運転される車やドローン、プラズマ廃棄システム、BMI(ブレイン・マシン・インターフェース)、時間哲学、遺伝子操作、体内時計を操作する薬 クロフィニル 、あらゆるものが投機対象になる新型SNS PAX 、そして地下に埋められた最新の加速器 日本号 、新興宗教 クロノカルト ……。それらはすべて AIR の創業者である時彫一族の意思によって導入されたものだ。謎が多い時彫一族についてわかっているのは、彼らが「時間」と名がつくもの―物理学、生物学、情報科学、薬学、そして宗教と哲学―に並々ならぬ異常な興味を持っているということだけである。
物語は、時巡市に住む17歳の少年と、14歳の少女の出会いから始まる。

登場人物

主人公&ヒロイン

白鳥鳥彦
しらとり・とりひこ
主人公。頭に鳥小屋をかぶっている。小説家で、AR(拡張現実)システム「カクリヨレンズ」で見られる世界「カクリヨ」の作家でもある。虐待のトラウマでホームセンターが苦手。あらゆることに憎悪を燃やし、完璧に間違ったことを愛する17歳。
時彫幽々夏
ときほり・ゆゆか
ヒロイン。セーラー服を着た時彫家の令嬢。6歳のとき自分を犯し、妹の幽美々を殺したディザ☆スター〈ピヘラフェニール星人〉を殺すために探し続けている。お母様には従順な、ちょっとツンデレな14歳。

警視庁関係者

桐谷正午
きりたに・しょうご
管理官。幾乃の同僚。警視庁の派閥争いに巻き込まれている。幾乃の秘密を知る男。
27歳のエリート。
山田処刑子
やまだ・しょけいこ
エプロンドレスのネコミミメイドロボット刑事。通称しょけたん。口から摂取したあらゆるものを分析する能力を持っているが、死体を食べる絵面になるためとても評判が悪い。こまめにバージョンアップされている。
お寿司が好き。
詩ノ宮幾乃
しのみや・いくの
ゾンビと死体とゲームを愛する天才警部。ゲーム内で見た技術を習得するゲーミフィケーションアーツの持ち主。警察内の複雑な派閥争いの駒になっている。人間より機械を信じるアメリカ帰りの20歳。

ずんだだ堂

姫竜刃織
きりゅう・はおり
物語の鍵を握るロシア帰りの謎だらけ探偵。「お土産物ずんだだ堂」の女店長。探偵。片目片足、白いハット。髪は虹色。赤い木刀。人間離れした身体能力を持つ。
大憑カテリナーチェ
おおつき・かてりなーちぇ
ずんだだ堂の店員。探偵助手。変なあだ名を付けるのと、垂直にジャンプする癖がある。ずんだ餅に異常な執着を示す。

時彫家

時彫知虎
ときほり・しりとら
絶大な権力を誇る時彫家の当主。頭にブラウン管テレビをかぶり、テルミンのような音声で会話する。「時間を巻き戻す」ことへの強迫観念に取り憑かれている。
時彫深憂
ときほり・みゆ
知虎の妻。幽々夏、幽美々の母。思わせぶりに暗躍し続ける。意外と若い32歳。
霧島
きりしま
時彫家の優秀なメイド。
右目が義眼。
ゆず
時彫家の愚鈍なメイド。見た目はコケシに似ている。

謎のカクリヨ使い

ミミコ
黒ウサギのアバターで、鳥彦の前に現れたカクリヨ使い。時彫家には時間を操る井戸があると示唆した。躁鬱気味で気分の浮き沈みが激しい。

特別緊急インタビュー

ゲンロン』にて「午後の部」を連載中の海猫沢めろん先生に、
ディスクロニアの鳩時計』の背景、今後の意気込みなどを伺いました。
海猫沢めろん うみねこざわ・めろん
1975年生。文筆業。『左巻キ式ラストリゾート』(星海社文庫)でデビュー。
『愛についての感じ』(講談社)で第三三回野間文芸新人賞候補。他に『零式』(ハヤカワ文庫JA)、『全滅脳フューチャー!!!』(幻冬舎文庫)、『ニコニコ時給800円』(集英社文庫)など。

左巻キ式ラストリゾート』から10年、セックス&バイオレンスの海猫沢めろんが帰ってきました。
冒頭から過激な場面が続きますが、なぜいまこのような小説を世に問おうと思われたのですか。

小説とは、SFミステリ純文学ロマンス哲学数学神学、善悪、崇高さと低俗さ、知性と反知性……相反するもの、あらゆるジャンルがそれひとつにつまっているカオスな物語のことですが、単純に今そういうものを誰も書いてない現状が大いに不満だからです。
あと、連載をはじめた2012年は個人的にあらゆることに絶望しており、例年に増して死にたくてたまりませんでしたが、そんなときに東さんからの依頼があり「殺るか殺られるか……ならば殺るしかない」と覚悟し、書きたいことを書こうと思ったのがきっかけです。最初の頃は書き終えたら死のうと思ってました。今は書き終えるまで死ねないと思ってます。

どのような読者に読んでほしいですか。

1)生きているのがつまらない。
2)世の中にあふれる「正しさ」にうんざりしている。
3)自分も含んだこの世界を憎悪している。
4)なにかとっても悪いことがしたい。
5)あらゆることがどうでもいい。
6)死にたい。

そんな人達を救いませんが、読むと5秒くらい寿命が伸びると思います。

小説内には震災を意識した設定やモチーフがあります。3.11は大きな影響を与えましたか。

大きな事件は無意識に作用するので、影響はあったと思いますが、もっと身近なところで、掲載誌がゲンロン発行ということが作品に影響を与えていると思います。

本作執筆にあたり、影響を受けた小説、映画、ゲームなどありましたら教えてください。

ネタバレにならない程度に書くと、

地下室の手記』ドストエフスキー
ドストエフスキー』山城むつみ
相対主義の極北』入不二基義
猶予の月』神林長平
時間衝突』バリントン・J・ベイリー
綿の国星』大島弓子
江戸川乱歩と大槻ケンヂの小説。

書くと即ネタバレになるような本は終わってから紹介します。
完結前に気づいた人は心にとどめておいてください。ネタバレしたらブログで叩きます。訴えます。マッドメンのコスプレで呪います。

午後の部、ついに『ゲンロン』創刊とともに始動です!
本作にかける意気込みと今後の展望を教えてください。

全体のおおまかな仕掛けは最初にできていて、カンがいい人はどんでん返しに気づいていると思うのですが、問題はそのあとにどこまで予想を裏切れるかです。整合性とか論理的とかそういうのはどうでもいいのでパッションと世界に対する呪詛を全開にして読んだら人が怒りで死ぬ小説を目指したいと思います。と……書きましたがそういう自分が書いたことに縛られず1行前を否定するような運動を繰り返して糞が糞によって糞になって糞のような糞を生み出しつつ糞が糞であることを肯定して否定して糞アウフヘーベンする奇跡を起こします。起こります。まあどうでもいいんですけどね。